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関節機能障害について

こんにちは、望クリニック副院長・AKA‐博田法指導医の住田憲祐です。 

これまで、整形外科の病気についてお話ししてきましたが、今回は基本に戻り、「関節機能障害」についてお話し致します。

関節はその構造からいくつかのタイプに分かれます。

AKA-博田法の対象となるのは、互いの骨がつながる部分を関節包(イラストの赤い部分)という袋で包まれている関節です。

イラストの膝関節、骨盤にある仙腸関節や背骨、手足の関節がそうです。

  関節機能障害とは? 

関節包の中で互いの骨の間には、わずかなスペースがあります。これを「関節の遊び」といいます。

イラストの大腿骨と脛骨の間の水色の部分のことで、骨と骨の間の隙間のようなものだとお考え下さい。

これがあることで、互いの骨は関節包のなかで、わずかに滑ったり、転がったりして動きます。

この動きのことを「関節包内運動」といいます。

関節包内運動は肘や膝の曲げ伸ばしのように目に見える大きな動きとは異なり、関節のなかで起こるわずかな動きです。

人が触れて感じられる動きのなかで最も微細なもので、その範囲は約1~3ミリといわれています。

このわずかな関節包内運動が滑らかに行われることで、はじめて関節は自然な曲げ伸ばしが出来ます。

「関節機能障害」とは、関節包のなかで互いの骨が滑らかに動かなくなった(関節包内運動が滑らかに行われなくなった)状態を指します。

  関節機能障害が痛みやしびれ、凝り等の症状を起こす 

関節機能障害が起こると、関節周囲の筋肉や靭帯などの組織に過緊張の連鎖がおこります。

これを関節反射といいます。

この反射により、身体の様々な部位に「痛み」「しびれ」「凝り」等の多様な症状を発症します。

関節機能障害は動きの少ない関節で起こりやすいのが特徴です。

(例)

・仙腸関節:骨盤にある関節

・肋椎関節:背骨と肋骨の間の関節

なかでも、仙腸関節の機能障害は他の関節の機能障害を引き起こします。

まず仙腸関節に機能障害が起こり、2次的に椎間関節、肋椎関節、手足の関節などが機能障害を起こします。これにより、頭から手足の先にいたる迄、全身どこにでもさまざまな症状を発症します。

AKA-博田法では、どの症状も仙腸関節から治療していくのは、この為です。

仙腸関節を治療した後で、ほかの関節に機能障害が残っている場合は、そこを治療していきます。

一般的な整形外科では、手足のしびれは、頸椎や腰椎に問題があると考えることはあっても、それ以外の症状は、痛みを感じている部位に原因があると考えがちです。

しかし、AKA-博田法ではその様に考えません。

痛み等の症状の多くは、仙腸関節の機能障害が根本原因となって発症すると考えます。

例えば手足の痛みでも仙腸関節から治療していきます。

これにより改善すれば、根本原因は仙腸関節の機能障害であると診断します。

この様に原因と離れた部位に起こる痛みを関連痛といいます。

そして、仙腸関節が原因のものを仙腸関節原性の関連痛と呼びます。

  関節機能障害の治療について 

現時点で関節機能障害の治療法は、AKA-博田法のみです。

関節機能障害は関節(主に仙腸関節)の状態により3つに分類します。

 ①関節機能異常: 

関節の動きが悪いだけのもの。最も軽症なもの。1~2回の治療で、3週間以内に改善します。

 ②単純性関節炎: 

関節の動きが悪いことに加え、炎症を起こしているもの。仙腸関節に起こりやすく、強い症状が出現します。

月1~2回の治療により3ヶ月位で改善します。

 ③関節炎特殊型: 

関節の動きが悪いことに加え、関節炎を繰り返すものや、関節が老化により硬くなっているもの。

特に仙腸関節に起こる炎症の特殊なものです。いろいろな治療を受けてもよくならない方に多く見られます。冷え等の自律神経の失調症状を訴える方が多く、全身のいろいろな部位に痛みやしびれ、凝り等を起こすことがあります。

月に1~2回の治療で主として2~3ヶ月、時に6ヶ月以上かけて改善します。この炎症が強いものや関節が硬いものは、最初の頃、治療直後でも症状の変化が見られないものがあり、その多くは2~3ヶ月目より徐々に改善し始めます。症状はその部位や強弱が変わったり、再発を繰り返したりしますが、治療により軽減します。

このタイプには老化によるものと、体質的に関節が弱いものがあり、AKA-博田法で治療しても関節の動きは完全には回復しません。そのため症状は完治しませんがより軽い症状でコントロールすることができ、日常生活の満足度が増す方が多いようです。

*望クリニックに来院される方はいろいろな医療機関を受診して治らなかった難しい方が多く、関節にも炎症がある方がほとんどです。治療期間に個人差はありますが、6ヶ月位で良くなる方が多くいます。

腰痛とストレッチ体操について ストレッチ体操で仙腸関節の動きはよくなりません

こんにちは、望クリニック副院長 AKA-博田法指導医の住田憲祐です。

今回は腰痛とストレッチ体操についてお話し致します。

高齢になるに従い、からだは硬くなっていきます。

患者さんからは、

「硬くなったらストレッチをしたほうがいいの?」

というご質問を受けることがあります。

私は、「ストレッチ体操で安全にからだを柔らかくすることは難しいです。痛い時は治療を優先する時期なので、ストレッチ体操は控えて安静にして下さい。そして、良くなったら無理のない範囲で行うのは結構です」とお答えしています。

つまり、痛い時は治療を優先し、ストレッチ体操はお休みして頂きます。痛みが良くなっても積極的にはオススメしていません。

例えば、腰痛は腰周りの筋肉が硬くなっている状態を痛みと感じていることがあります。そのため、ストレッチ体操をすると、腰回りの筋肉が緩んで痛みが楽に感じたり、腰の曲げ伸ばしが良くなったりして身体を柔らかく感じることがあります。

これを患者さんは関節が柔らかくなったと感じるのでしょう。

ストレッチ体操は筋肉を緩める1つの手段であり、それにより痛みがなく元気が保てていれば良いでしょう。

問題はそれでは良くならない腰痛です。

この場合、ストレッチ体操を続けることに疑問があります。

また、身体が硬いことと関節の動きが悪い事は、必ずしも一致している訳ではありません。例えば、身体は柔らかいのに仙腸関節の動きは悪く、固まってしまっていることもあるので注意が必要です。

ストレッチで柔らかくなるのは主に関節の周りの筋肉です。動きの範囲が広がったり柔らかくなった感じがしても、関節の動きそのものは良くなっていないこともあります。

では、関節の動きをよくするにはどうしたら良いのでしょう?

例えば病院のリハビリを思い出して下さい。怪我等で硬くなった関節の動きをよくする運動を、リハビリの先生にやってもらったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

関節の動きをよくするには、他の人の手により行う方が望ましいです。

自分で行う運動や体操は、安全性や有効性に疑問があるからです。

望クリニックでは、関節の動きをよくする手段として、AKA-博田法を取り入れています。

AKA-博田法とは、1つ1つの骨に触れて関節の中の動きを滑らかにする治療方法です。

関節が動作に伴い動く時、その中で起こる動きを関節包内運動といいます。

関節包内運動が滑らかでない(動きの悪い)状態を関節機能障害といいます。

関節機能障害は全身の関節に起こり得ますが、なかでも骨盤にある仙腸関節の機能障害は、腰痛の原因の1つとして知られています。

私が患者さんにストレッチ体操を積極的に勧めない理由は、ストレッチ体操自体が仙腸関節の機能障害を起こし、腰痛を発症することがあるためです。

特にストレッチ体操を続けていてもなかなか良くならなかったり、腰痛を繰り返す場合は、すでに仙腸関節に機能障害を起こしている可能性があります。

例えば、長年の腰痛に苦しんでいるバレリーナの患者さんは、身体は非常に柔らかいのですが、仙腸関節の動きは悪く、とても硬くなっていました。つまり、ストレッチ体操をしても仙腸関節は柔らかくなっていなかったのです。

このように、ストレッチ体操は

腰痛の治療という点でオススメできません。先ずは痛みをしっかりと治療すると良いでしょう。

※仙腸関節体操、仙腸関節に対するストレッチを勧める整形外科や整体院があるけど、それってどうなの?と思う方もいらっしゃると思います。これについては、また別の機会に書こうと思います。

まとめ

・ストレッチ体操は腰痛の治療ではなく、痛くない方がリラックスや心身の健やかさを保つために無理のない範囲で行うのはよいでしょう。

・ストレッチ体操で柔らかくなるのは主に筋肉で、腰痛の原因となる仙腸関節の動きそのものは柔らかくなりません。

・ストレッチ体操をしても腰痛を繰り返す方は、AKA-博田法で仙腸関節を治療してみるとよいでしょう。

腰が痛くても、筋力トレーニングはした方がいい?

こんにちは、望クリニック、AKA-博田法指導医住田憲祐です。

日々、診療していると、腰痛が腹筋や背筋、体幹の筋肉を鍛える筋力トレーニングで改善すると考える患者さんが多い事がわかります。

しかし、腰痛に対して一生けん命に筋力トレーニングしているのに改善しないどころか悪化してしまったという方も少なくありません

なぜそのような事が起こるのでしょうか。今回は、腰痛と筋力トレーニングの関係について、腰痛が改善しない理由を関節包内運動の見地からお話ししようと思います。

テレビの健康番組でも、腰痛に対して筋肉を鍛えることを勧めることがあります。

専門家である整形外科医が勧める事もあり、患者さんがその様に考えることは当然だと思います。筋力トレーニングを勧める理由は、主に2つです。

腹筋と背筋のバランスが悪くなると腰椎の湾曲が強くなり、腰にかかる負担が大きくなる。

また、腹筋背筋の筋力が低下すると腰にかかる負担が大きくなるという考えです。

現に、筋力トレーニングをすると腰痛が軽減することもあります。軽症の方で、良くなってしまえばそれで良いのかもしれません。

しかし、筋力トレーニングをしても良くなっていかない方はどうすればよいのでしょうか。痛くても無理をして腹筋、背筋をするのが本当によいのでしょうか

腰痛に良いとされる腹筋、背筋体操などの筋力トレーニングをすると、筋肉は動かしたことで、一時的に緩みほぐれた状態になります。

軽症で腰回りの筋肉が硬く緊張している状態を腰の痛みとして感じている方は、腹筋背筋に限らず運動をする位でも腰痛が和らぐことがあるようです。

しかし、筋力トレーニングをしてもなかなか痛みが引かない方や、かえって痛みがつよくなってしまったという方の場合は、そう簡単にはいきません。腰回りの筋肉の異常な緊張を引き起こす原因をきちんと見極める必要があります

私が専門で行なっているAKA-博田法では、筋肉の緊張を引き起こす原因は、骨盤にある仙腸関節の関節内部の動きが悪くなっている事だと考えています。

仙腸関節は骨盤の真ん中にあり、体を動かすときに負担がかかりやすい関節です。

腹筋や背筋等の筋力トレーニングは、仙腸関節に負担をかけ、関節に炎症を引き起こしてしまい、仙腸関節の関節内部の動きを悪くしてしまう事があるようです。

通常、このような現象は、仙腸関節に異常がない方であれば、腹筋、背筋等の筋力トレーニングや運動をしてもこのような事はめったに起こりません。

注意が必要なのは、仙腸関節の関節内部の動きが悪くなっている方です。その場合、一生懸命に腰痛を治そうと腹筋や背筋などの筋力トレーニングや運動をやればやるほど仙腸関節の炎症が強くなり、腰の痛みが強くなっていく傾向にあるようです

仙腸関節の関節内部の動きが悪くなっている状態を関節の機能障害と言います。

仙腸関節の機能障害が腰痛の原因である場合、治療は仙腸関節の関節機能障害の治療が最優先になります。治療方法は、私はAKA-博田法を使っています。筋力トレーニングは仙腸関節の関節機能障害が改善した後、患者さんの状態をみて必要であれば、お勧めします。

まとめ

腹筋や背筋などの筋力トレーニングをしているのにかえって、腰痛が悪化しているという場合、筋肉の異常な緊張を引き起こす原因として仙腸関節の機能障害が関係している事があります。

仙腸関節の機能障害が腰痛の原因の場合、治療は仙腸関節の治療をすることが、筋力トレーニングよりも優先になります。

筋力トレーニングは仙腸関節に負担をかけてしまう為、AKA-博田法等で仙腸関節の関節機能障害がよくなってから必要に応じてする事がおすすめです。

痛みのセルフケアについて

こんにちは、望クリニック医師、住田憲祐です。

コロナウィルスの影響で、なかなか通院できない方も多いと思います。

そのような方に、仙腸関節の由来の腰痛みやしびれ、こり等を改善するためのセルフケアについてお話し致します。

私がお勧めしているのは次の4つです。

①無理をしない

②同じ姿勢は20-30分まで

③前後屈体操

④冷やさない

では、1つずつ解説していきます。

①無理をしない

当院では、痛みやしびれ、こり等を発症した状態を、その方にとって無理な状態と考えます。

患者さんによっては、「これをすると痛くなる」、「このぐらいやるとしびれてくる」と言うように、ご自身で傾向を把握してる方も多いでしょう。

症状がよりつらい時は、仙腸関節への負担が増していることが多いのです。これを我慢して無理を続けていると、なかなかよくなりません。負担が避けられないときは、より負担の少ない方法や加減をすることで対処しましょう。

最も仙腸関節への負担が少ないのは、左右いずれかのつらい方を上にして、横を向いて膝を曲げて寝ている姿勢です。就寝時はこの姿勢で休むようにして下さい。また、仰向けでないと眠れない方は、膝の下にタオルのようなものを丸めて入れるのも良いでしょう。治療を受けている期間は、ご自身の症状を観察しながら養生してください。

②同じ姿勢は20-30分まで

座位、立位にかかわらず仙腸関節には上半身の重さが加わり、それを筋肉が支えています。同じ姿勢を続けると同じ筋肉を使い続けることになります。一見楽に見える姿勢であっても、疲労が溜まります。それにより、上半身の重さを支えきれず、仙腸関節への負担が増し、痛みやしびれを発症します。これを防ぐためにも、20-30分同じ姿勢をしていたら姿勢を変えると良いでしょう。

③前後屈体操

仙腸関節は骨格の構造上負担のかかる関節です。整形外科の痛みやしびれという意味では弱点ともいえます。そのため、当院では仙腸関節に機能障害を起こさないために予防の体操をお勧めしております。

やり方は、立ったまま軽く前後に3回、前後屈をするだけです。

これにより、仙腸関節が少し動きます。強く行うと悪化することがあるため、軽く行うことが重要です。

またこの体操はこまめに行ってください。目安は20-30分に1回です。

わずか5秒でできる簡単なものです。良い方法なのでぜひ実践してみてください。

④冷やさない

患者さんの多くは、筋肉が硬く緊張してる状態を痛みやシビレなどの症状として感じています。

お風呂に入りよく温まると、症状が緩和する方がいらっしゃいます。これは温めたことで筋肉が一時的に緩んだためです。逆に、筋肉は冷えると緊張がより強くなる性質があります。つまり、仙腸関節が悪くなって起こる緊張に加えて、冷えて筋肉が緊張した分が割り増しになるのです。冬の寒さだけじゃなく夏の冷房など、お体を冷やさないように気をつけてください。

以上、仙腸関節由来の痛みやシビレ、コリを改善するためのセルフケアになります。

望クリニック 副院長 住田憲祐でした。