腰痛診療ガイドライン2019年について

こんにちは、望クリニック副院長の住田憲祐です。

今回は腰痛診療ガイドライン2019年から、腰痛の原因について、現在の整形外科では一般的にどのような考えが主流なのか。

また、それに対する私の考えを話していこうと思います。

腰痛ガイドライン2019年版は、日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修した本です。

一般的な整形外科の腰痛診療に対する考え方が書いてあります。

よく腰痛の85%程度が原因不明であるという話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは、この7年前に出版された2012年の腰痛診療ガイドラインに記載されていた話で、もともと欧米の雑誌から引用されたものです。

これに対して、2019年度版のガイドラインにはこう書かれています。

・その根拠は米国の総合診療医に情報を統合されたものであるため、その正確性と詳細は不明である。

・近年鈴木医師により発表された、腰痛の原因を調査した報告によると、椎間関節性22%、筋筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄症11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%と75%以上で診断が可能であるという研究が出てきた。これにより、腰痛の85%は非特異的腰痛であるという事については再考する必要があると書かれています。

この内容を踏まえて、私の考えをこれからお話いたします。

まず、仙腸関節が原因の腰痛が認知されてきていると感じました。

以前は、腰痛の原因として仙腸関節があげられる事すらほとんどありませんでした。

仙腸関節性の6%は、椎間板ヘルニアの7%とそう変わらない数字です。ヘルニアと同じくらい仙腸関節が原因と腰痛があると考えると、かなり多いように感じるのではないでしょうか。

しかし、この研究では仙腸関節が原因である腰痛の一部しか診断できていないと考えます。なぜなら、このガイドラインで書いてある研究は、仙腸関節を診断する方法として仙腸関節に局所麻酔薬を注射する、仙腸関節ブロックを用いているからです。

その証拠に仙腸関節ブロックが全く効果なく、仙腸関節は問題ないと他の整形外科の医師に言われた方でも、AKA-博田法で仙腸関節を治療すると腰痛が楽になり、仙腸関節が原因であったという患者さんが当院に数多くいらっしゃっています。

仙腸関節ブロックでは、仙腸関節の動きを評価できません。その為、仙腸関節の原因である腰痛の一部、6%しか見つけられなかったのではないかと私は考えています。

またこの研究の平均年齢は55.7歳とされています。

仙腸関節は、40歳を超えてくると加齢による影響で関節の軟骨がすり減ってくるため、徐々に関節の機能障害が起きやすくなってくると言われています。

この研究に参加した患者さんのほとんどに、仙腸関節の軟骨がすり減り、動きが悪くなり、仙腸関節の機能障害があってもおかしくはありません。

例えば、狭窄症と診断された方が、実は仙腸関節の機能障害も引き起こし、仙腸関節も痛みの原因となっていた。

ヘルニアと診断された方が、仙腸関節の機能障害も引き起こし、仙腸関節も痛みの原因となっていた。

このようなケースもあったのではないでしょうか。

事実、このような患者さんが当院には多くいらっしゃいます。

他にも、気になるのは腰痛の原因として椎間関節性の22%と筋、筋膜性18%についてです。

この2つは仙腸関節の関節機能障害が起きると、以下の2つの現象が起こる事を博田節夫先生が発見しています。

①椎間関節の関節の動きが悪くなり、機能障害がおこる。特に腰椎の椎間関節は仙腸関節機能障害が原因で動かなくなってしまうことがほとんどである。

②腰周辺の筋肉等の軟部組織の異常な収縮がおこる

仙腸関節の機能障害により起こる①、②の現象は、椎間関節、筋筋膜性の腰痛と非常に似ています。そのため、私は、椎間関節性、筋筋膜性の腰痛あわせて40%も仙腸関節の機能障害と密接な関係にあると言えると思います。

私の考えとしては、仙腸関節の機能障害が椎間関節、筋筋膜由来の腰痛のほとんどを引き起こすと考えております。

まとめです

・腰痛診療ガイドライン2019年版で、腰痛の原因として椎間関節性22%、筋筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄症11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%。75%以上で診断が可能であるという研究について掲載されました。

仙腸関節由来の腰痛が6%という結果になっています。以前より仙腸関節性の腰痛が認知されてきています

しかしながら、仙腸関節ブロックで診断できる仙腸関節由来の腰痛は一部にとどまります。

AKA-博田法のような仙腸関節の動きについて評価できる診断方法を用いていたら、違った結果になったのではないかと考えられます。