こんにちは、望クリニック副院長・AKA-博田法指導医の住田憲祐です。
今回は体操やストレッチのなかでも特に、「仙腸関節の体操」や「仙腸関節のストレッチ」についてお話し致します。
最近、整形外科でも腰痛の原因として、仙腸関節の異常が少しずつ注目されています。
仙腸関節が原因と考えれば、それに対する治療法や体操が出てくるのは当然です。
しかし、同じ仙腸関節の治療でも、仙腸関節の何を治療するのか?が重要です。
AKA-博田法の場合、治療対象は仙腸関節の機能障害です。
関節は互いの骨が接する部分を関節面といいます。そして、この関節面は関節包という袋に包まれています。
関節包内運動とは、この関節包の中で起こる微細な動きのことです。
関節機能障害とは、この関節包内運動が滑らかでない状態のことをいいます。
何故、関節機能障害を治療する必要があるかというと、これが起こると、筋肉の異常な緊張が起こり痛みやシビレを発症するからです。
治療は、ひとつひとつの骨に直接触れて行います。
仙腸関節のわずか1~3ミリの微細な動き(関節包内運動)を感じて滑らかに動くようにします。
つまり、仙腸関節周辺を動かせば良いのではなく、仙腸関節の機能障害を治療する(=関節包内運動を良くする)ことが大切なのです。
それゆえ、治療には熟練の手技が必要です。
他方で、異なる仙腸関節のアプローチもあります。
例えば、このブログのタイトルである、仙腸関節の体操や仙腸関節のストレッチといわれるものです。
他にも、仰向けに寝た状態で仙腸関節の下にボールの様な物を入れて動かす方法や、ズレを治すという方法もあるようです。
やり方は様々ですが、結果的には仙腸関節周辺や腰回りの筋肉の緊張が緩み、痛みが楽になるのでしょう。
これにより良くなっていれば、さらに治療する必要はありません。
しかし、良くなっていない方や、再発を繰り返す方は、要注意です。
体操やストレッチで仙腸関節周囲の筋肉が緩むことはあっても、仙腸関節の機能障害(=包内運動の異常)を治療することは難しいからです。
例えば、
仙腸関節の体操やストレッチをして腰痛が良くなったという方はいらっしゃるでしょう。
これは、体操等で腰周りの筋肉が緩んだことによる可能性があります。
その一方で、腰が痛くなかった方が腰痛になったり、元々の痛みが増すこともあります。
これは、仙腸関節に無理が加わり、肝心の機能障害が悪化したためと予想できます。
この様に、効果はまちまちで、仙腸関節にアプローチ出来たとしても、治療としては十分とは言えません。
とくに仙腸関節に炎症がある方が行うと、痛みが悪化する可能性は増します。
同じ仙腸関節へ働きかけると言っても、AKA-博田法とは全く別のことをしているケースが多いのです。
腰痛がなかなか良くならず、仙腸関節が原因かなと?感じたら、機能障害の治療は重要な選択肢の1つといえるでしょう。
最後に、関節機能障害の視点からみた体操をオススメします。
前後屈体操
立位で軽く前後に身体を曲げ伸ばしします。
一見すると何をしているか分からないような体操ですが、この運動に伴い仙腸関節の包内運動が起こります。
前に深く曲げたり、後ろに反らせ過ぎると、かえって包内運動を悪化させる(関節機能障害を生じる)可能性があるため、軽く行うのがポイントです。
この体操は、AKA-博田法で治療したうえで行うと、比較的仙腸関節の包内運動を保ち機能障害を防ぐことができます。
簡単な体操なので、こまめに行ってみてください。
まとめ
・仙腸関節の体操やストレッチでは、仙腸関節周囲や腰周りの筋肉が緩み、痛みが緩和することがあります。
・仙腸関節の体操やトレッチは、仙腸関節の機能障害の治療にはなりません。
・仙腸関節の体操やストレッチ自体が仙腸関節への負担となり、痛みの原因になることもあります。
・仙腸関節の包内運動を保つ(=機能障害を防ぐ)体操としては、前後屈体操がお勧めです。